副社長のイジワルな溺愛
「……倉沢さん、好きな人のことを諦めてマレーシアに行くって言ってたんですけど」
「うん」
「私と同じ経理室にいる子も、倉沢さんのことが好きだったんです。私は彼女みたいに堂々とそれを口にはできなかったけど、負けないくらい好きで」
「そうか」
私に熱い想いを届けてくれているのは副社長なのに、こんな話は聞きたくないだろうな。
でも、どうしても副社長にしか話せない。
副社長が私を甘やかすから、話すつもりのなかったことも口を突いて出てくる。
「彼女が、倉沢さんの辞令を見てショックを受けてて。私は想いを伝えたぶん後悔はないけど、彼女はどうだろうなって思ったら、背中を押してあげたくて……。それで、告白したら倉沢さんも彼女のことが好きだったみたいで」
そこまで話したら、胸の奥がぎゅーっと締め付けられて息苦しくなった。
倉沢さんのことはもう好きじゃない。諦めるしかないって分かってるし、終わった恋にしがみつきたくもない。
でも……。