副社長のイジワルな溺愛
「すみません。こんな話、聞きたくなかったですよね」
涙の痕を指先で拭いながら、彼から離れる。
甘えさせてもらってばかりじゃ申し訳ないし、もし私が彼の気持ちに応えられなかったら……悪いことをしたなぁって、少なからず思うだろうから。
「知れてよかったよ。茉夏が泣いたり落ち込んでるのを放っておくほうが、今の俺はつらい」
もう大丈夫か?と優しい眼差しを向けてくれる副社長に、私は一度頷いて答えた。
「甘えてしまってすみません」
「俺がそうしてほしかっただけ」
初めて副社長と接したあの日、こんなに優しくて温かい人だとは思いもしなかった。
ただ苦手だなぁって感じて、できれば接点を持ちたくないと避けていた。
なのに、今は……副社長が私の毎日にいる。
嬉しいことも悲しいことも、つらいことも、彼には何でも話せそうな気がする。
きっと何を言っても、微笑んでくれそうだ。
そして、喜びは倍になるし、悲しみは薄くなる。