副社長のイジワルな溺愛
愛さずにいられない
私の心と頭を支配するふたつの出来事。
ひとつは、金曜に副社長への想いを自覚したこと。
いつからなのかは自分でも分からないけれど、文字通りいつの間にか恋に落ちていた。
初めてした大人っぽいキスは、恋人同士じゃないと絶対に交わさないもので。
ふと私の記憶から鮮明に蘇っては、彼の息遣いや唇の感触、温もりや動きまで思い出してしまう。
土曜も、日曜も、今日も……ずっと副社長が私を支配しているようで、なんだか心地いい。
もうひとつは、試験結果が不合格だったこと。
いきなり二級から受験するなんて無謀だったんだろうなぁ。
副社長がくれたタクシー代のお釣りで、参考書を買わせてもらったのに申し訳ないと思う。
「深里さん」
「どうしたの?」
「どうしたのは、こっちの台詞。出勤してからずーっとぼんやりしてるけど大丈夫?」
「そんなことないよ」
慌てて香川さんに否定を返すものの、実際仕事が手につかなくなりそうで。
それくらい、副社長の濃厚なキスが私の中に刻まれてしまっている。