副社長のイジワルな溺愛

「今日は俺もお揃い。じゃ、またね」

 殺伐としていた経理室内が一瞬華やいだのも束の間、倉沢さんとお揃いの炭酸水はいつもより美味しく感じて余韻に浸っていると、無言でお局様が書類の束を私のデスクに置いていった。


「遅刻しそうになったくせに、社内の男性と仲良くする余裕はあるのね」
「すみません……」

 私が慌ただしく出勤してきたなんて倉沢さんが知るはずはなく、彼に非はない。
 せっかくのラッキーな朝が、また沈んだ気分に支配されていく。


「深里さん、深里さん」
「はい」

 二つ隣に座っている倉沢さん派の香川さんが声を潜め、椅子に座ったままやってきた。


「倉沢さんとどうして仲がいいの?」
「仲がいいというか、経理業務で何度かお話しただけです」
「そう、それなら大丈夫。ごめんね」

 少しでも彼とお近づきになろうものなら、こうして詮索されるのか……。


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