副社長のイジワルな溺愛
思わず悲鳴を上げそうになって、口を押さえる。
副社長が壁にもたれて私を見つめていたのだ。
「昨日は遅かったのか?」
「……はい。あれからまだ業務が残っていたので」
「何時に帰ったんだ?」
「二十二時過ぎです」
「そうか」
無関係だとは言わないけど、代理で領収書を差し替えに行ったのに労いのひと言ももらえないのかと、少し不服を感じる。
私なんかのために気を使うことはないだろうけど、それでも副社長に頼まれて行ってきたのに。
「ああいうお店って、楽しいんですか?」
「……そうだな。君と話すよりは有意義ではあるだろうな」
聞かなきゃよかった。
初めて見た夜の世界がどんなものなのか気になっただけなのに。