副社長のイジワルな溺愛
途中で誰も乗り合わせることなく、社食のある三階にエレベーターが到着すると、副社長も一緒に降りてきた。
「副社長もこれからランチですか?」
「私はもう済ませた」
「そうですか」
副社長が社食を食べているところなんて見たことがないし、噂を聞いたこともない。
それに、そんなことがあれば女子社員が群がるように集まるだろう。
「Cセットください」
「はいよー」
おしゃれなコックコートを着たおばちゃんが威勢よく返事をしてくれたけど、見渡してもこの時間にランチを取っている人はいない。
トレーに乗せられた牛丼と味噌汁、お新香を適当なテーブルに運んで席に着く。
うちの社食はTVでも取り上げられるくらい美味しいと評判だけど、本当に食べたかったメニューは売り切れていた。