副社長のイジワルな溺愛
「何もないだろうから、十八時に正面玄関で待っているように」
「あのっ」
座っている私を見下ろす長身と突き刺さる視線に、わずかに身を引く。
「……特別な約束はないんだろう?」
金曜は経理業務もひと通り終わって、スッキリ気分爽快な夜なのに、誰とも約束はない。
だからって、なんで副社長に決めつけられなくちゃいけないのよっ!
「分かったなら返事をしなさい。金曜十八時、正面玄関。わかったな」
「……かしこまりました」
「それと、当日はもうちょっと気を使った服装で出勤するように。念のためだ」
そう言って、副社長は社食から出て行った。
気を使った服装って、どんな感じ? 社内の華やかなお姉さんたちが着ているものは高価そうだし……。せめてスカートを穿けば許されるかなぁ。
副社長との約束の意図はわからないけど、命令に背くわけにはいかないだろう。