副社長のイジワルな溺愛

 彼女は俺と目を合わせ、沈黙を守る。

 俺も何も言わずに抱きしめていた手で背中を撫で上げると、恥ずかしそうに俯いてしまった。


「何でも話すって約束、しただろ?」
「そうだけど、でも」
「でも、じゃなくて。茉夏はあの時何がしたいと思ったの?」

 分かってるよ、俺がそういう雰囲気に持ち込んだんだから。
 たまには彼女から「欲しい」って言われてみたいと思っただけ。

 無理強いをしてもかわいそうかと諦めかけたその時、意を決したように彼女が顔を上げた。


「慧さんに愛されたいって……思っちゃって。会社でそんなことを考えたのが恥ずかしくて……」

 ごめんなさい、となぜか謝る彼女がかわいくてたまらない。
 もっと困らせて涙目で俺を欲しがってくれたらいいと、俺の悪い顔が覗く。


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