副社長のイジワルな溺愛

 四月下旬の金曜、一気に春を感じる陽気につられて、社内の雰囲気も軽くなる。

 今日は茉夏から聞いていた食事会当日。
 彼女を社内で見かけることはできなかったけど、行くときに連絡をするようにと前もって約束をしておいたから、それまでは仕事を進めることにした。
 次々と舞い込む案件を、いかに利益につなげるか。他にもたくさん考えることはあって終わりなどない。


 十八時半を回った頃、副社長室で送られてきていたメールを確認していたら、デスクに置いていた携帯が反転した。


【お疲れさまです。これから幸田さんと食事に行ってきます】
【行ってらっしゃい。他のメンバーは?】
【皆さん忙しいみたいで、現地集合になってるみたいです】

 ほらな、思ってた通りだ。
 どうせ他のメンバーなんて最初からいないんだろ? そのうち来るって言いながら酒を勧めて、酔わせて抱くのが目的だってことはお見通しなんだよ。


 PCをシャットダウンして、ビジネスバッグを手に地上階へ急いだ。


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