副社長のイジワルな溺愛
エレベーターで下降する間、心が急く。
まだいるだろうか、もしもう社を離れて街に出てしまっていたら、どうやって追いかけようか……そもそもそんなことをして、茉夏は嫌がらないか。
だけど、このままではいられない。
百パーセント危険だと分かっているのに、どうして強引にでも止めなかったのかと、あの夜の自分を責めたくなる。
茉夏があまりにも悲しそうな顔をしていたから……なんて言ったところで、何の役にも立たないただの言い訳だ。
地上階に着くと、すれ違う社員の会釈に目礼を返しつつ、せかせかと歩を進めた。
まだ社の入口で立ち話をしている二人を見つけたけれど、エスコートのつもりなのか、幸田の手が茉夏の背中に触れたのを見て、俺は脇目もふらず直進していく。
「幸田、久しぶり」
振り返った彼は、とても驚いた顔をした。
それもそうだろうな。俺が副社長になってからまともに話すのは初めてなんだから。