副社長のイジワルな溺愛
「……お疲れさまです」
「お疲れ」
茉夏も控えめに挨拶をしてくるけど、この様子だと俺と彼女の関係は、彼の耳に入っていないのだろう。
「今日、これから食事でもどうだ?」
「申し訳ないのですが、先約がありまして」
「……彼女と?」
俺の誘いを丁重に断った幸田に問いかけると、言葉なく頷きながら肯定する。
「彼女は俺がもらうよ」
「いや、あの……約束していたのですが」
機会があれば経理室のフロアに寄って、茉夏と話して交流を深めたのだろう。日々、今夜のために口説き落として、さぞかし努力したんだろうな。
茉夏も男を知らないから、思いのほか話も早かっただろうし……。
「彼女と出かけるなら、先に俺の許可を取れ。茉夏は俺の女だ」
「え、あ……そうだったんですね。じゃあ、またそのうち」
明らかに怯えた表情で去っていたのは、ただ食事をするだけじゃなかったから。
堂々と誘えない幸田を見て、きっと茉夏も分かってくれただろう。