副社長のイジワルな溺愛
「……どうした?」
「慧さんはもっと怒ってると思ってたのに……そんなに切ない顔をしてるなんて思わなかった」
「俺は、茉夏を守りたかっただけ。喧嘩をするつもりはない」
幸田がどういうことをしようとしていたのか、それは彼女ならきっと想像できるだろう。
敢えて言葉にしなくとも、どうか俺の真剣な気持ちで分かってくれたらと願う。
帰宅してすぐに彼女を抱きしめた。
束縛はしたくない。でも、傷ついてほしくない。
こんなにも大切で愛しい彼女に、俺だけを見ていてほしい。
「慧さんが言っていた意味、少しわかりました。きっと私が甘かったんですね」
「……甘かったというか、仕方ないよ。茉夏は俺が守るから、大丈夫」
それだけ彼女が純粋で、人を疑わない性格をしているということ。
何も悪いことではないし、このままでいてほしいと思う。
「でも、分かっていてほしい」
抱きしめていた身体を離して、彼女をまっすぐに見つめた。