副社長のイジワルな溺愛
「ただいま」
「……おかえりなさい」
帰宅を報せる声に応じるものの、一緒にいる女性が気になって仕方ない。
私みたいに『元・地味子』ではなさそうな雰囲気に、洗練されたクールな印象で……悔しいけど彼の隣が似合っている。
もしかして、別れ話でもされちゃうのかな。
彼ほどの人なら、どこかの令嬢を選んだって不思議じゃない。現に、社長である彼の兄は、取引先のお嬢様と恋愛結婚したらしいし……。
「ほら、ぼーっとしてないでお通しして」
「……はい」
長い廊下を案内すると、彼は自室に荷物を置きに行ったようで、一瞬でもこの女性と二人になったのが気まずくて、何も言葉を掛けられなかった。