副社長のイジワルな溺愛

 スキンケアを済ませたところで、シャワーで暑くなった身体がちょうど冷めてきた。
 部屋着を着ようと棚を開けて思い出す、数時間前のこと。


 ぐるぐると回っている洗濯機のドラムを眺めていたら、慧さんが村上さんを連れて帰ってきて……。

 乾燥器が使えない表示の部屋着を干さずに出かけてしまっていたのだ。


「……どうしよう」

 着るものがない。
 このままタオルを巻いているだけじゃ、絶対に風邪をひくだろうし……。

 バスケットに掛けた浴衣を手にするけど、とても羽織れる状態ではない。
 リビングに着ていた服があったと思い出して、洗面室を出ようとしたら、ちょうどシャワーを済ませた彼と顔を合わせてしまった。


「なにしてんの?」

 ドアに掛けていたバスタオルを腰に巻いた彼の引き締まった身体に視線が泳ぐ。
 何度見ても、有り余る色気にはどうしても慣れそうにない。


「部屋着、洗濯したままだったから……」
「あぁ、着るものがないのか」
「今日来てた洋服があるから、大丈夫」

 洗面室を先に出ようとしたら、彼は私の手を引いて自室へと向かった。


< 364 / 386 >

この作品をシェア

pagetop