副社長のイジワルな溺愛

 和装の女将に出迎えられ、予約していた個室へ入る。
 茉夏は店の入口を見ただけで緊張していたようだけど、気さくな女将のおかげで少し解れたようだ。


「食事は全員揃ったところで声を掛けさせていただきますので」

 かしこまりましたと言って、女将が下がっていく。
 個室の引き戸が締められると、茉夏は不思議そうに俺を見た。


「全員って、他にどなたがいらっしゃるんですか?」
「会えばわかるよ」
「……私がご一緒してもいいんですか?」
「もちろん。先方も茉夏に会いたいと言っていたからね」

 艶のあるやわらかな素材のネイビーのシャツがよく似合う彼女は、隣に座る俺を一瞥して、また緊張しはじめた。


「大丈夫だよ、怖い人じゃないし。とても素敵な方だから」

 店員が持ってきた献立を受け取り、テーブルの端に置く。
 ほどなくして、女将が個室の戸を細く開け、先方の到着を報せてくれた。


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