副社長のイジワルな溺愛

「申し遅れました。私は御門建設の経理室で勤務しております、深里と申します」
「お話は伺っておりますよ。御門副社長にとってかけがえのないお方と」

 永井社長に言われると、自分のことながら恥ずかしく感じるが、茉夏が頬を赤らめて俯いてしまっていて、場が一層和んだ。



「まずはお食事を頼みましょうか。深里さんも、お好きなものをどうぞ」
「あ、ありがとうございます!」

 永井社長が気を使って、手元に広げていた献立を見ている茉夏に優しく声をかけてくれた。
 緊張しながらも笑みを返す彼女が愛しいと、こんな場でも思う俺は相当惚れこんでいるんだと自覚させられる。


 先に頼んだビールが届き、乾杯をしてグラスを傾ける。
 アルコールで少しでも彼女の緊張が解れたらいいと思っていたけど、向かいに座る端正な顔の二人に微笑まれて、なかなかそうもいかないようだ。


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