副社長のイジワルな溺愛

「どうしましょうか、少しずつ頼んでもいいですが、コースでもよろしければ」
「そうしましょう。その方が気楽ですしね」

 永井社長に話を合わせ、料理長のおまかせ会席を注文した。
 前菜に、万願寺唐辛子や海老チーズ焼、吸物に鱸酒焼や生麩が入ったすまし仕立てのもの。
 お造りには、伊勢海老や本鮪、石鰈にあおり烏賊。

 蓋物や食事、留椀もあるから空腹は間違いなく満たされる。それに、この店の料理は間違いない。


 順に運ばれてくる食事を楽しみながら、互いの近況を話した。


「そろそろ本題に入りましょうか」
「そうですね。茉夏、今日来てもらったのは、これから話すことに協力してほしいからなんだ」

 すまし汁に口をつけていた彼女が姿勢を改めると、永井社長が微笑ましいと言いたげに表情を再び和らげた。


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