副社長のイジワルな溺愛

「弊社はチャペル等を手掛けておりまして」
「はい、存じております」
「ありがとうございます」

 丁寧に事の成り行きを話し出す永井社長は、少しも威圧のない人柄で、声色も円い。
 俺とは真逆と言っても過言ではない彼に、茉夏はすっかり魅了されているような横顔を見せながら、相槌を入れて話し出した。


 隣に俺がいるって忘れてないか?
 そりゃあ、永井社長ほどの男性を前にしたら、女は瞬殺だろうとは思う。
 今夜は俺がここに連れてきたんだけど……やっぱり彼女に瞳に他の男が映るだけで妬いてしまう。

 こんなに妬くような男じゃなかったはずなのに……。



「近々、御門建設さんのお力を借りて、新しいチャペルとリゾートホテルを建設する予定なんです」

 永井社長の説明を聞いた彼女が、右隣にいる俺に視線を合わせてきたから頷いて答える。


「茉夏の意見を聞きたいそうだよ。女性として、人生の大切な出来事を作る場所がどんなものがいいか」
「わ、私の!?」

 驚いた彼女は、永井社長と九条さんを交互に見て驚いたまま、大きな目をさらに丸くした。


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