副社長のイジワルな溺愛

「深里さんはどんなチャペルがお好みですか? 神前式も厳かでいいですよね」
「……私は、どちらかというとチャペルが好きです」
「そうですか。やっぱりドレスは着たいですよね」

 渡されたのは、既存のチャペルのパンフレット。どれも永井ホールディングスが手掛けているものだ。


「その中で好きなものをいくつかピックアップしていただけますか?」
「かしこまりました」

 ページをめくるたびに、彼女がうっとりとした表情に変わっていく。

 やっぱり女は結婚に憧れているんだなぁと、改めて知った。現実ばかり見てきた俺とは違って、もうちょっと夢のある瞬間があってもいいと、茉夏からは学んだ気がする。

 恋のために懸命になったり、相手を振り向かせるために努力を惜しまなかったり。
 報われるとも限らないのに、恋をしている“今”を楽しんでいて。
 いつか、愛する人と時間を積み重ねていきたいと……。


「ちなみに、副社長はどれがお好みですか?」

 九条さんが冗談交じりで聞いてきて、茉夏がすかさずパンフレットを広げて見せてきた。


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