副社長のイジワルな溺愛
「どれがお好きですか?」
何もわかっていない茉夏は、なんてことなさそうに広げたパンフレットを一緒に覗き込んでくるけれど、テーブルの向かいに座っている二人の表情は、珍しいものを見たとでも言いたげで楽しそうだ。
浮いた話は噂程度しかなく、女性がいる店でも冷たそうな印象を持たれている俺が、茉夏にだけはつい頬を緩めてしまったり、妬いてしまう心模様を見透かされたのかもしれない。
仕事に支障はないけれど、俺の印象が大きく変わったことだろう。
「俺はいいから、茉夏が選びなさい」
ここで楽しくチャペルを選んだりする、若い恋人同士のようなテンションにはなれない。
あくまでも取引先の社長といるわけだし。
「御門副社長は、チャペル派ですか?」
「……そうですね、どちらかと言えば」
ただでは話を終わらせてくれない永井社長が、私を少しからかって微笑んできた。