副社長のイジワルな溺愛
彼女が選んだいくつかのチャペルに合わせ、海外のチャペルや城、ホテルなどの資料を見せて、おおよその雰囲気は伝わったらしく、永井社長と九条さんは丁寧に頭を下げてくれた。
業界の内外で影響力のある人物なのに、相変わらず腰の低い社長の姿に、勉強させられるところは多々ある。
呼んでおいた二台のハイヤーにそれぞれが乗り込み、店を後にした。
「どうして私の意見なんかお聞きになりたかったんでしょうね」
車内でそれとなく聞いてきた彼女の手を取って、やんわりと繋ぐ。
ずっと触れたかったけど、さすがに憚られるから我慢していた分、想いが爆発しそうだ。
「……結婚に憧れて、あれこれ見聞きした情報で頭でっかちになってる女性ではない、初見レベルで話を聞いてくれる人がいればって言われたから、俺が茉夏の名前を挙げたんだよ」
「そうだったんですか」
「楽しかったか?」
「はい、とっても!」
淀みのない純粋な笑顔を向けられ、ぎゅっと苦しくなった胸の奥の衝動のまま、俺は彼女に口づけた。