副社長のイジワルな溺愛

 ――翌週、月曜。
 さすがにお礼は言うべきかと思い、出社してすぐに経理室を出て、就業時間前に副社長室へやってきた。


「おはようございます。副社長は出勤されてますか?」
「いらっしゃってますので、どうぞ」

 秘書室を覗くと、既に仕事に取り掛かっていたり、室内の細かな清掃をしている秘書の姿。先週、領収書の件で対応してくれた人は、私を覚えていてくれたようですぐに通してくれた。


 簡単にこのドアを開ける勇気は未だなく、副社長室の前で深呼吸を数回繰り返す。

 ノックは二回、ドアは内開き。
 どうぞと返されてゆっくり開けると、窓辺でコーヒーを飲んでいる副社長と目が合った。


「おはようございます。経理室の深里です」
「――おはよう。また何か不備でもあったか?」
「いいえ、先日のお礼に伺いました」

 一瞬でも表情を崩さず、にこりと微笑むことのない彼はハイバックのデスクチェアに腰かけた。
 

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