副社長のイジワルな溺愛
「用が済んだら戻りなさい」
「ありがとうございました。失礼いたします」
あと五分で始業時間。
遅刻はしていなくても、席にいないとまたお局の先輩が口うるさそうだ。
髪を巻いて、ちょっとメイクも変えたら……倉沢さんはまた話しかけてくれるかな。かわいくなったって褒めてくれるかなぁ。
彼のことを考えるだけで、幸せな気持ちになれる。
成就する可能性は低そうだけど、好きでいられたらそれだけでいい。
他に誰も乗り合わせていない下降するエレベーターの中、思い切り頬を緩めた。
副社長は、先週初めて話した時に比べれば話しやすい感じはしたけど、やっぱり冷たそうで苦手だ。
でも、私なんかのために怒ってくれたのは意外だったし、あんな笑顔を見せられるとは思ってなかったなぁ。