副社長のイジワルな溺愛
途中階で止まったエレベーターの中、操作盤の横の壁にもたれていた姿勢を瞬時に正す。
「あれ? おはよう、深里さん」
「おはようございますっ!!」
月曜の朝から倉沢さんに会えるなんて、今週は運がいい。
グレーのYシャツの袖をまくって、資料を片手に乗ってきた彼は朝から忙しそうだ。
「もう朝からバタバタで参ったよ。深里さんに会えたからちょっと癒されたけど、これから急に客先が来るっていうから」
「大変ですね」
「本当、いきなり来るとか勘弁してって感じ」
わざとしかめっ面をしてから笑った彼に、胸の奥がギュウギュウに締め付けられる。
痛くて苦しいのに幸せな気分だ。
「倉沢さん」
「はい」
何か話したくて呼びかけたものの、話題が見つかっていない私は妙な間を取ってしまった。