副社長のイジワルな溺愛
冷たさの裏側
翌朝、いつもより三十分早く起きて、髪を巻いてみる。
慣れていなくてぎこちないけど、昨日帰りに買ったファッション誌に載っていた通りにすると、なんとかそれっぽくはなった。
胸下まである黒髪が、緩やかな曲線で華やかに見える。
いつもはファンデーションを塗るくらいだけど、ブラウンと淡いピンク系のアイシャドウを塗って、細くアイラインも引き、久しぶりにマスカラも塗ってみた。
それに、瓶底と言われている分厚いレンズの眼鏡も外し、コンタクトレンズを着けている。
自分でもわかる変化に、心が弾むような気分だ。
毎日乗る電車の中、人の視線が気になる。
私のことなんて気に留めたことのない、新聞を読むサラリーマンだって、どういうわけか今日はやたら目が合った。
もしかして、似合ってないから変なのかな……。
魅力を磨くなら髪を巻いてメイクをしたらいいって、副社長が言ってくれたんだけどなぁ。