副社長のイジワルな溺愛

「ここ、美味しいよね」
「……!? 倉沢さん!!」

 隣の席からにこやかに声をかけてくれた彼を見るなり、落ち込んでいた気持ちが軽くなる。
 そして、いつもと違うはずの私で会うのは初めてで、気恥ずかしくて俯いてしまった。


「俺は鰻とろろ蕎麦にしたけど、深里さんは?」
「あ、えっと……天ぷら蕎麦」
「店員さん、注文いいですか?」

 倉沢さんが気を利かせて店員を呼んでくれて、スムーズに注文ができた。


「ありがとうございます」
「いえいえ。なんか元気なさそうだからさ」
「……そんなことないですよ」

 副社長との噂の一件はあるけど、こうして倉沢さんとばったり遭遇できたのはとても嬉しい。


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