副社長のイジワルな溺愛

 一時間半ほど経過して正午前になると、会議室から戻ってきた室長と一緒に倉沢さんが入ってきた。


「倉沢さん、お疲れさまです」
「お疲れさま。ちょっとお邪魔します」

 倉沢さんと同じ大学出身の先輩が経理室にいて、寄った時に先輩がいると連れ立って出ていくことが多い。
 香川さんの挨拶にも朗らかに返した彼と目が合ったけど、私には何も言ってくれなかった。


 もしかして、別人だと思われた?
 いやいや、まさかそんなはずはない。この席に座っているのは私だもの。


「例のプロジェクトの打ち合わせだったんですけど、ちょっと相談があって――」

 真面目な話をするようだ。
 彼ほど仕事熱心な人だったら、私みたいに恋愛に一生懸命になる時間もないかもしれないなぁ。

 私も頑張って、建設業経理士の検定に合格するよう頑張らなくちゃ。


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