副社長のイジワルな溺愛

 電話をかけてきた相手は、構造設計グループ内の経理を担当している女性だ。
 大人数を抱えている御門建設では、各部署ごとに経理を簡単にまとめてくれる役割を担っている社員がいる。その社員たちから報告がまとめて上がってくるのが月末から月初にかけての締日で、内容に不備があればそれぞれ申請者に差し戻し等を行う流れになっていて……。


「すみません、お忙しいところ」
「いえ、お早めにご連絡いただけてよかったです」

 いつの間にか担当者が変わっていたようで、引き継いでもらった内容を覚えきれていないうちに前任者が異動してしまって困っているとのこと。

 室内を見渡せば、倉沢さんが眼鏡をかけてPCと向き合っている背中を見つけた。
 設計を請け負っているだけあって、三次元CADを操作しているようだ。
 格好いいなぁ……。託された内容はもちろん、数百年に一度の地震や暴風に対する安全性もきちんと考えてつくらなくちゃいけないなんて、責任重大だろうな。


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