副社長のイジワルな溺愛

「深里さん、ここなんですけど」
「これは、先に勘定科目を選ばないと動かせないんです。それで、選ぶものはこの一覧の中にあって……」

 つまずいていると言われた箇所の説明をして、早々に構造設計グループを出てきてしまった。
 私が出入りしただけで、副社長との噂を知る女性社員が冷たい視線を向けてきたからだ。でも、倉沢さんへの想いだけは誰にも負けたくない。
 きっとそのうち、噂なんて消えるはず。気にしないのが一番。
 そう思っていてもやっぱり気がかりで、そのたびに落ち込んでしまう。

 倉沢さんが噂を信じず、変わらずに接してくれているのが救いだ。



【ぜひ、よろしくお願いします。楽しみにしています】

 席に戻って、見てきたばかりの倉沢さんの背中を思い出しながら返信する。
 来週の金曜は気合を入れよう。そのために副社長はアドバイスをしてくれていたんだから。


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