『好き』を伝えたい
『好き』を伝えたい
いろいろな音と声が混じり合うフロア。
鳴り響く電話の音から部長の怒鳴り声まで。
せわしなく動く人もいれば、
PCから目をそらさず難しい顔をしている人もいる。
『早送り』と『一時停止』が同時に行われているようだ。

私はそんなフロアの一番端の席に座り、ひたすらにデータを打ち込む、『一時停止』組の一人だ。

「仲村さん、この前頼んだ資料って出来てる?」

溢れる音の中で響く低い声にドキッと胸が弾む。

「あっ、はい。櫻井主任。先ほど主任のPCに添付して送りました。プリントアウトしたものは今まとめていますので、もう少しお待ちいただけますか?」

焦ってしまい、手元にあるプリントをバサバサさせてしまった。

「別に焦んなくていいよ。まだ余裕あるし。…ありがとな」

フッと笑ったあと席に戻っていく後ろ姿をしばし眺めてしまう。

(相変わらずいい背中…)

なんて変態じみている暇はない!

止まった手をもう一度動かし出した。
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