『好き』を伝えたい
ポンっと肩を叩きながら、飲みおわった缶コーヒーをゴミ箱になげ、『行こっか』と言った。

笑顔で頷き後に続いた。

こうも簡単に、納得され背中を押される。
それが、私と主任の間柄だ。私達はそれだけの距離感しかないのだ。

泣きたくなるのは、私が主任を好きだから。
1年前、配属されてから、毎日、厳しさと優しさにふれてきた。
笑顔も、困った横顔も、席に戻る後ろ姿も、全てが私の胸をざわめかせてきた。
『好きなんだ』と認識するのに、それほど時間はかからなかった。

そんな気持ちを打ち明けられる勇気なんて持ち合わせているはずもなくて、ただただ想うばかりの1年間。

それでも、見ているだけでよかった。
話せるだけでよかった。

そんなささやかな幸せももうすぐ終わってしまう。

自分で決めたことなんだから、せめて最後まで頑張った姿を見せようと主任の後ろ姿に誓った。




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