『好き』を伝えたい
とうとう最終出勤日。

いつもより早く出勤した私は、まだ音のないフロアを見渡した。

たった1年だったけれど、その1年の半分の時間をここで過ごしてきた。
仕事もやりがいがあった。周りも温かい人ばかりだった。
それに、…一方通行だけど恋もした。

ココから離れるのは寂しいけれど、私はきっと頑張っていける。
また歩いていける。

(ありがとうございました。私、頑張ります!)

私はフロアに向け、深々と頭をさげた。


「仲村さん」

頭を上げたとたん聞こえてきた耳に優しい低い声。

「あっ、おはようございます、櫻井主任」

センチメンタルになっていたところを見られたのが恥ずかしくて、最後なのに顔がみれない。

「おはよ。今日で最後だな…」

寂しそうに言ってくれた。
それだけで充分だと思った。

「はい、お世話になりました。ありがとうございました」

笑顔で答えることができた。


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