見えない・・心

···つらい過去の塗替え


榎音は、今でもクリスマスイブが
苦手だ。

毎年、イブには
家族と涼、かすみ・佑斗と
自宅で過ごしている。

そんなみんなに
「外で過ごしていいんだよ。
私は、お家が落ち着くだけだから。」
と、言っているが。

今年のイブの日·····

淕から
「学会のパーティに出席するから
一緒に出席して欲しい。」
と、頼まれた。

榎音は、準備をして会場のホテルに
着くと淕が待っていた。

淕に案内されて
ホテルのスウィートへ
「ん?淕?」
「すまない、榎音。
  パーティは、嘘だ。
  榎音の中のイブの日を
      ぬり替えたくて」
「もう、あの頃の私ではないから
  大丈夫なのに。」
と、言う榎音に
「榎音。
気づいてないだろう
イブが近づくと笑みが少なくなり
ボォーとしたりソワソワするだ。
あけて25日になると
トタンにガラリとかわる。
ごめんな、俺のせいだ。」
「えっ・・・嘘だ。
 ・・普通じゃ・・・ない?」
「今日は、ゆったりと
二人だけで食事をしよう。」
と、淕は、榎音の腕をとり
テーブル一杯に広がる料理の前に
榎音を座らせた。

今日榎音は、
背中の開いたマーメイドドレスを
着ていた。

スタイルの良い榎音には、
とても似合っている。

淕は、榎音のコートを脱がせたときに
榎音のきれいな背中に
口づけをした。
「綺麗だよ、榎音。」
と、耳元で囁きながら・・

二人は、目の前の食べ物を堪能した。
始め・・ぎこちなかった榎音も
ワインも入って、リラックスしてきた
ように思えた。

淕は、榎音を温かい服に着替えさせて
外に出掛けた。

榎音は、躊躇するが
淕は、榎音の手をとり
港futureのイルミネーションへやって来た。
あの頃と変わらず
沢山のカップルや家族連れが
イルミネーションを見ていた。

イルミネーションに近づくと
足が止まる榎音
淕は、そっと榎音を抱き締めて
「榎音、愛してる。」
と囁きながら
榎音の顎を持ち上げて
榎音の瞳に自分を写してから
榎音の唇にキスをした。

すると、榎音の瞳から
ツーッと涙が流れた。

淕は、榎音の涙を親指で拭いて
「榎音、変わらず君を愛してる。」
と、伝えると
「わ‥‥わっ‥たしも
   淕を‥‥‥愛してる。」
と、言って
淕の背中に腕を回した。

その腕は、震えていたが
淕は、ギュッと力を込めて
抱き締めた。

榎音が少し落ち着くと
淕は、榎音の肩を抱いて
イルミネーションの近くへ行く
「‥‥きれ‥‥いっ‥‥」
「そうだな。」
と、いいながら
淕は、榎音の指に自分の指を絡め
榎音の手の甲にキスをして
自分のコートのボケットに
二人の手を入れた。

榎音は、びっくりした顔を
淕に向けると
淕は、待っていたように
自分の背を屈めて
榎音の唇にキスをおとす‥‥

榎音の瞳からは
次々に涙が溢れだし
淕は榎音を抱き締めた。
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