見えない・・心
···淕
榎音・・・・
驚いた。
理人から、連絡で
「彼女が貸していた本を持ってくるから
俺が間に合わなかったら
受け取っておいて。」
「そう、わかった。
やっと、会わせる気になったんだ。」
「まぁね。じゃ、頼むね。」
と、話して電話を切った。
それから、少しすると
来客のブザーがなり
解除した。
その時、確認することもなく・・・
再び、玄関のブザーがなり
玄関をあけると・・・
えっ、榎・・音・・?
美しく成長した榎音が立っていた。
だが、目の前にいる榎音の顔は・・
みるみる・・
悲しげな・・
怯えたような・・・
じりじりと下がる榎音に
堪らなくなり抱き締めた。
榎音が
「離して・・・」
と、暴れても離してやることが
できなかった・・・
その時、理人が帰ってきて
榎音は、慌てながら
自分がこけそうになって
俺が助けた、と言った。
だが、榎音は俺を見ることもなく
理人に本を返して
足早に去って行った。
追いたい気持ちを抑える
俺と榎音の後ろ姿を交互に見ながら
理人が追いかけて行った。