見えない・・心
···かすみ
榎音は、本当に綺麗な子で
心も優しく、成績も良かった。
そんな榎音だが、
すっかり恋愛に臆病になっていて
私達はとても心配していた。
佑斗は、一生結婚しなくてもいいとか
言っていたが・・・
兄には、全てを話してないが・・・
ある程度は、わかっているだろう・・
中学二年生の時
榎音が進路を・・・
兄と同じ弁護士になるか
私と同じ看護士になるか
悩んでいた。
頭の良い子なんだが
やるならきちんとやりたいらしく・・
「沢山悩んで決めたらいいよ。」
と、私は話した。
だけど、上を狙いたいという榎音に
私は、私の同級生を
家庭教師にどうかと提案した。
榎音は、どこにいても目立つ
塾に通っていたが・・・榎音目当てに
色んな学校の生徒が集まってきて
あまりの多さに
勉強に支障がでると
回りから言われて
塾通いをやめた。
かなり、回りの女の子達には、
陰険に意地悪されたようだが・・・
その点、家庭教師なら・・と
当時 高城 淕 33才。
妻も子もいて安心だし
仕事も大学教授で
教える事もうまいから
彼が適任だと思った。
淕は、週三回来てくれることに・・
この事が、可愛い姪を
傷つける事になるなんて‥‥‥‥
家庭教師を始めて、
淕から
「榎音は、頭が良くて教える事はないぞ。」
と、言われていた。
ひと月、ふた月は、
順調だった。
だが、榎音は日増しに淕に
思いを寄せるようになって行った。
そんな榎音が中学三年になると
榎音は、淕に想いをぶつけるように
なっていった。
事あるごとに、自分の気持ちを伝え
淕を困らせていた。
その度に淕は、
「ありがとう。
だが、何度言われても
俺は妻を愛してる。
榎音も同じ世代の子に目を向けなさい。」
と、言っていた。
だが、榎音もめげずに
「じゃっ、じゃ、先生一回だけ
一度だけでいいから
デートしてください。」と。
だが、淕は、
「榎音、無理だ。
俺は、妻を裏切らないし
そんなことしても
先はないんだから
余計に榎音が辛くなるだけだ。」
と。