見えない・・心

···永住


かすみは、心配そうな顔をして
俺の前に現れた。

「淕・・・」
「そんな、顔するな
良い中年が情けないだろ」
「バカっ、そんなこと思うわけない。」
「ああ、わかってるよ、
お前はそんなやつじゃないって。」
「淕、何て言ったら・・・・」
被せるように淕が、
「かすみ。
俺、ドイツに行くわ
ドイツの恩師からオファーが来た。
あっちに永住しても良いと
思っている。
理人も独り暮らしを
始めたみたいだから。」
「えっ、ドイツ?
もしかして、真田教授?」
「ああ。」
「やっぱり。
真田教授は、淕を可愛がっていたからね。」
「今、フボルト大学の名誉教授なんだ。」
「淕、言い訳なんだけど・・・」
淕は、首をふりながら
「嫌、いいよ。
榎音が、倒れた理人を
看病した・・だけなんだろ
わかってるんだ
それが、榎音の優しさだと
俺は、榎音や理人に
腹が立った訳ではないんだ
ただ、上手くいかないな
と、その思いだけだった。」
「やはり、わかっていると
思っていた。」
「ああ、すまない。
かすみ、榎音に会うつもりでの
帰国だったけど
会わずにドイツに行くよ。」
「わかった。
時期をおいて榎音には
話しておくから。
榎音、看護師として
頑張っているよ。」
「そうか。
ありがとう。
よろしく頼む。」

かすみと別れてから
理人にメールした。
ドイツの大学に行く事になった
と、マンションは
お母さんの思い出もあるから
そのままにしておくから
暇なときに
空気の入れ換えに行って
ほしい。と

俺は、それから一週間後に
ドイツに飛び立った。
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