見えない・・心

···淕


淕・・

ドイツにきて
ひと月が過ぎた。

榎音にきちんと
別れを告げないのは
卑怯だと、わかっていたが
中々、出来ずにいた。

だが、日本の大学の手続きで
日本に帰国した時に
理人と楽しそうに食事をしていた
榎音を見かけて
俺の中で気持ちが固まった。

それから、ドイツに戻り
メールをした。

ラインでは軽すぎるから
メールをして
その事をかすみにも
伝えた。


『榎音。
きちんと別れを告げずに
去ってしまい、申し訳なかった。
やはり、俺と榎音は、結ばれる運命に
なかったのだと
改めて思い知りました。

榎音は、榎音らしく
生きて、幸せになれ。

一緒に過ごせた時間は、
とても幸せだった
ありがとう。

        淕』
と、送った。
< 72 / 108 >

この作品をシェア

pagetop