誰も知らない彼女
助けたいと思っている自分を自分で止めているなんて、私ってなんてバカなの。


最低だな。


私が吐いたはぁ、とため息は、静かな空気と化して消えた。


私の息が消えた直後、ポーカーフェイスを装っていた若葉がこちらへ駆け寄ってきた。


「……っ、え、えの……」


きっと私に話したいことがあると思ったのかもしれない。


若葉の必死な表情で、そのことがわかる。


しかし、私の近くにいる仲間は、若葉の行く道をふさいだ。


「ダメだよ〜朝丘。抹里に頼っちゃったら」


「そうそう、由良の言うとおり。自力でなんとかすればー?」


「あはは。由良に秋帆、性格悪ーい!」


「でもさ、ほんとのことじゃない? 悪いのは全部朝丘さんだもん、自業自得だよ」


「バカだね〜そういうやつって。抹里ちゃんにすぐ頼るなんてバカのすることだよ〜」


由良と秋帆が前に立って道をふさぎ、ネネとえるといっちゃんはうしろで笑いながら、私を守るように立っている。


たったそれだけのことだったのに、若葉は由良たちの行動を見てさっと顔を青くした。


そして、あのときのように頭を両手で抱えて絶叫した。
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