誰も知らない彼女
「ぎゃあぁぁぁぁぁっ‼︎ やだぁぁぁぁぁ‼︎」


耳をふさぎたくなるような叫び声。


完全に体育の授業のときを再現している。


若葉の絶叫に我慢できなくて、耳をふさぐ子や教室を出ていく子もいた。


その中に、由良たちは入っていない。


耳をふさぐ子や教室から出た子とは違い、由良たちは若葉の叫びに一生懸命耐えているのだろう。


よく見れば、由良たちの握り拳がぷるぷると震えている。


握り拳を震わせている理由はまったくわからないが、なにかに対して我慢しているのはたしかだ。


「うわぁ、出たよ朝丘の叫び。私、その叫び嫌いなんだよね〜」


「わかるわぁ、それ。朝丘の叫び声って悪い意味で朝丘っぽくないよね」


苦笑いを浮かべて若葉を指さす由良に、腕を組んで首を上下に振って納得顔の秋帆。


言いたいことを言ってくれたと思ったのか、うしろの3人は満足そうな表情を見せている。


5人は若葉の叫びを近くで聞いていたこともあり、若葉の大声に対する嫌悪感を丸出しにしている。


他のクラスメイトは若葉の絶叫を直に聞いたため、驚きと恐怖が入り混じった表情をあらわにした。


「え……これが朝丘さんの叫び声?」
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