誰も知らない彼女
「ふふっ、今回は自信あるんだ」


「あっ。そういえば秋帆、最近塾に行ったって言ってたっけ。彼氏との約束をほっぽりだしてまでさ」


「すごいね、高島さん。その努力、実ってるといいね」


「いやいや、えるっちも塾でテスト対策してきたって言ってたじゃん。だからえるっちも成績上がると思うよ」


自信満々の秋帆に驚いてみせるネネ、本気で羨ましそうに秋帆を見つめるえるに、えるの肩を叩いて彼女を褒めるいっちゃん。


秋帆たちがいつもよりも明るく見えた。


若葉の暴走事件があったせいか、彼女たちの表情に怒りが見あたらない。


秋帆たちの表情に違和感を覚えたと同時に、なにやら大きな紙を持った学年主任の先生がいそいそとこちらに駆け寄ってきた。


私の視線に気づき、学年主任の先生の姿をすぐに見つけた秋帆が思いっきり向こう側に手を振った。


「先生ー! 待ってますよー!」


よほどテストに自信があるのか、妙に声を張りあげる秋帆。


そんな秋帆に小さい声で「わかってるから、わかってるからそこどいて!」と指示する先生。


その指示で、近くにいた生徒がそそくさと道を開ける。


生徒たちが作ってくれた道を通り、そこに立ち止まって十数秒後、先生がこちらに体を向けた。


いよいよ来たか、このときが。
< 109 / 404 >

この作品をシェア

pagetop