誰も知らない彼女
☆☆☆
「はぁ……」
片手で頭を抱えながら、数分前に着いた屋上の壁にもたれかかる。
教室にいたときは自分を囲む空気から逃れたいという一心で飛びだしたけど、よく考えれば、それは自己中心的な考えじゃないかと思う。
今さらながら、自分の行動に後悔してしまう。
壁にもたれながらズルズルと腰をおろす。
すると、屋上のドアが重々しく開いた。
ギィィ……。
肩をビクッと震わせておそるおそるそちらに目を向けると、ひとりの女子生徒が姿を現した。
彼女の姿は、顔を見ただけですぐにわかった。
朝丘若葉ご本人だった。
若葉はドアを開けて入ってくるなり、私に気づいてこちらに歩み寄る。
なぜか体が震える。
「……榎本さん?」
目をしばたたかせて首をかしげる若葉。
「あ、朝丘さん……ど、どうしてここに?」
教室内での由良と秋帆たちの会話を聞いたんじゃないか、と余計な心配ごとをしているせいか、声がうわずり震える。
だけど若葉はまったく気にしていないようで、ニコッとした笑顔を私に見せる。
「たまにはひとりで休みたいなって。でも、まさか榎本さんがいるとは思わなかったから……」
なんだ。
若葉サイドの女子ふたりからの情報で、私を敵にまわしたのかと思った。
びっくりした。