誰も知らない彼女
ごくっと唾を飲み込む。


緊張に支配された私を完全にスルーして、成績発表の紙を見た周りの生徒がザワザワと騒ぎはじめた。


自分の成績が前よりも上がったとか下がったとかだと思うけど。


そんなことを思いながらゆっくりと視線をあげると、驚きの光景を目にした。


成績上位に若葉の名前がなかった。


連覇することはできないだろうなとは思っていたけど、上位に若葉の名前がないのは驚きだった。


前回は1位で、しかも他の人の成績を大幅にうわまわっていたのに。


どこにあるだろうと探した数秒後、やっとで若葉の名前が書かれているのを見つけた。


これ、現実なんだよね?


一瞬だけ自分の目を疑ってしまう。


なんと“朝丘若葉”という名前は、一番下に書かれていた。


私たちの学年の生徒は250人だから、250位?


若葉がこんなにも順位が下がっていることに驚くが、私の予想は当たっていたようだ。


呆然とする私をよそに、由良が興奮した様子で私の肩をバシバシ叩いてきた。


「ねぇ、ちょっと抹里! 私の成績と順位、前より上がったよ!」


う、嘘……!


由良のテストの成績と順位が前回より上がったの?


「ゆ、由良……すごいね……」
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