誰も知らない彼女
そうかな?


私はいつも成績上位だったから、すごいとかさすがとか言われても正直あまり嬉しくない。


むしろ慣れていると言ったほうが正しい。


だけど仲間から褒められたら感謝の言葉を言うべきだという私の信条がどうしても出てしまう。


「あ、ありがとう。でも、まだまだかな」


曖昧な笑みを見せながら、言葉を由良たちにぶつける。


しかし、由良たちはポカーンと口を大きく開けて目をしばたたかせた。


えっ、そんなに驚くこと?


私には由良たちの表情の意味が理解できない。


首をかしげて眉間にシワを寄せたそのとき。


「あぁぁぁぁぁぁ‼︎ 私はもう終わった、もう死んじゃうよ……」


どこかで聞いたことのある言葉に叫び。


すぐに若葉が両手で頭を抱えている姿がパッと想像できた。


きっと自分の成績を見て、自分が本当に絶望的な立場に立たされたことをようやく理解したのだろう。


もともと頭のいい若葉ならすぐにわかることだと思うけど。


なんて思いながら声のしたほうに視線を向ける。


私の嫌な予感はみごとに的中していた。


嫌な予感であればあるほど、その予感はなんでも的中してしまうもので……。


「…………!」
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