誰も知らない彼女
私の考えの渦中にいた人物、若葉が数メートル先の廊下で頭を抱えながらへたり込んでいた。


その目には大粒の涙があふれ出ている。


ここから少し遠いから気のせいかもしれないけど、彼女の目が鋭く充血しているような感じである。


しかし、そんな若葉の存在なんてはじめからなかったかのように、私以外の生徒はシカトしている。


やばい、ここで助けないとまた若葉が暴れる……！


自分でも驚くくらいに目を大きく見開いて、若葉のもとに駆け寄ろうとする。


その数秒後。


「ぎゃあぁぁぁぁぁ！ トップの座をあいつに取られたーっ！ ゔわぁぁぁぁ‼︎ どうしてくれんのよぉぉぉぉぉ！」


自分の順位がトップから最下位に落ちたという事実をいまだに受け止められずにいるらしい。


私を人さし指でビシッと指し、だだをこねる子供のように泣き叫んだ。


さすがにこの状況になったら振り向かずにはいられないと思ったのか、この場にいる全員が若葉のほうを見た。


それと同時に由良がコソッと私に耳打ちをする。


「たぶん抹里に成績トップの座を奪われたのが相当悔しいみたいだね。抹里、取ってよかったよ。ふん、抹里を陥れようとするからバチが当たるんだよ、ざまぁみろ」
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