誰も知らない彼女
「……あのね朝丘さん、決められた順位はもう変えることはできないんだよ。暴れたってあがいたって順位は変わらない。それに、私は朝丘さんが今までキープしていたトップの座を奪ったわけじゃないからね」


今まで若葉にこんなに強い言葉をぶつけたことがあっただろうか。


真剣な表情で若葉を見据える自分自身に驚くが、表情をキープし続ける。


もし私がすぐに表情を変えたり崩したりしたら、若葉は何度も暴れ狂うだろう。


若葉が誰かを騒がせるようなことは絶対に止めないといけないんだ。


心の中でそうつぶやきながら、若葉の手がしがみついている腕を思いっきり振り、若葉の手を強く振り払った。


そのタイミングで、周りにいた生徒全員が再びザワザワと話しはじめた。


「たしかにそうだよね。決められた順位に対して抵抗しても、変えられないものは変えられないんだよね」


「……榎本さんにそう言われると、なんだかそう思えてくるな」


「榎本さんの言うとおりだね、いくら暴れてあがいてもなにも変わらないって」


「学年1位の榎本さんにそう説得されたら、絶対に言い返せないよ……」


共感の声が多く聞こえてきたなかで、驚きの声も少なくなかった。


由良たちも目を丸くしている。


「今の……抹里の言葉……?」
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