誰も知らない彼女
第3章
信頼をこの手に
私が若葉に反発して数日、若葉は借りてきたネコのようにおとなしくなった。
クラスでどれだけ非難や恐怖の目を向けられても、まったく反応しなくなったのだ。
無反応だからてっきり無視しているのかなと思っていたが、彼女の表情を見るとどうもクラスメイトたちからの声が気になっているような感じだった。
体をガタガタと震わせていて、握りしめた拳に力を入れており、額には大量の汗が浮かんでいた。
どう考えても、彼女は我慢しているようにしか見えない。
なんて思いながら若葉を見ていると、スカートの左ポケットに入れていたスマホがブルブルと震えるのがわかった。
誰にもバレないようにコソコソと教室を出る。
そのときに体育の授業で感じた視線を強く感じたが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
教室から数十メートル離れた階段の踊り場に着いたところでスマホを手に取り、画面をタップする。
タップした直後に画面に表示されたのは【磐波さん 着信】という文字。
磐波さん⁉︎ いったいどうして……。
驚きと疑問を同時に抱きながらも、画面を再びタップして電話に出る。