誰も知らない彼女
胸に手を置いたと同時に、いつの間にか顔色を戻した磐波さんが私の肩に手をそっと置いた。


「……よかった。とりあえずどっかにいかないか? ここにいちゃマズいだろうし」


えっ、ここにいたらマズい?


それっていったいどういうことだろう。


私以外の誰かにバレたらマズいことでもあるの?


それとも、若葉に恐怖を抱いていることとなにか関係があるのだろうか。


彼が焦っている理由がわからなくて、頭上にクエスチョンマークを浮かべる。


でも磐波さんの身になにかが起こったあとじゃ遅いんだ。


ここは、磐波さんの言うことをちゃんと聞いておくことにしよう。


「そうですね。電話で話した内容がバレたらマズいですよね。じゃあ、学校近くのファミレスに行きませんか? そこなら、今の時間帯が一番空いてると思いますし」


おそるおそるといったふうに、近くにあるレストランへと誘導する。


でもそこは私と同じ学校の生徒もたまに来るから、磐波さんは嫌がるかもしれないな。


言ってすぐに後悔したが、磐波さんの顔色が明るくなった。
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