誰も知らない彼女
ストーカー……?


呆然として再びなにも言えなくなった私をそっちのけに、由良が話を続ける。


『誰か知らないけど、誰かに見られてる感じがするってことは……ストーカーしかなくない? 実際、知り合いのお姉さんが抹里と同じ体験をしたんだけど、その視線の正体がストーカーだったんだって』


そうなのかな。


もし由良の言うとおりだとしても、思いあたる人なんていない。


由良の知り合いがストーカー被害に遭ったという話をスルーしていることに気づかないフリをする。


しばらく押し黙ったあと、ゆっくりと口を開けた。


「で、でも、ストーカーだって証拠がないじゃん。証拠がまったくなくてストーカーだって言うのはまだ早いよ」


そうだよ。


私の話を聞いただけで、その正体がストーカーと決めつけるのは違うと思う。


もしかしたら気のせいかもしれないし。


心の中の自分にそう言い聞かせて首を上下に振る。


『あとであとでって言って、本当にストーカーだったらどうするのよ! 抹里が襲われてからじゃ遅いでしょ!』


「お、落ち着いて、由良。ね、ね?」


『落ち着いていられるかっつーの!』
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