誰も知らない彼女
短気でも人の言うことはちゃんと聞いて、率先して行動する。
そういう人がグループのリーダーに向いているのかもしれない。
私は友達から優しいとは言われるけど、友達が思っているほど優しくはない。
リーダー性のある秋帆よりひどい人間だと自分自身思っている。
心の中で自分を非難しながら、秋帆にさっきまでいっちゃんが泣いていた理由を説明した。
いっちゃんをまた苦しめることになるかもしれないけど、話さなければ解決しない問題もある。
私ひとりだけではこの問題は解決しないので、偶然窓を開けた秋帆に来てもらった。
いつまでも頼りっきりではダメだと思っていても、誰かに助けを求める必要があった。
ものの数分で話し終えたあと、秋帆は眉間にシワを寄せて難しそうな顔をした。
「うーん。いっちゃんの彼氏が、あの雑木林の中で死んでたなんてね……。どうすればいいか私に聞かれても正直困るけど、悲しい出来事は忘れるしかないね」
今まで自分にとって大切な存在を一度も失った経験がないのか、いっちゃんになんて言ってはげませばいいかわからないらしい。
しかし『悲しい出来事は忘れるしかない』という秋帆の言葉が出た途端、いっちゃんが泣き叫んだ。
忘れられるわけがない。
大好きだった自分の恋人を失ったショックは計りしれない。
同じ経験を持った人じゃないと、いっちゃんを落ち着かせることができないのか。
悲しみによる悲痛な叫び声がこの場所を包み、私は秋帆と目を見合わせた。
秋帆はあきらめたように首を小さく左右に振る。
どうすればいいのかわからない。
私たちでもおさえることができないいっちゃんの慟哭に、ただ黙ることしかできなかった。
そういう人がグループのリーダーに向いているのかもしれない。
私は友達から優しいとは言われるけど、友達が思っているほど優しくはない。
リーダー性のある秋帆よりひどい人間だと自分自身思っている。
心の中で自分を非難しながら、秋帆にさっきまでいっちゃんが泣いていた理由を説明した。
いっちゃんをまた苦しめることになるかもしれないけど、話さなければ解決しない問題もある。
私ひとりだけではこの問題は解決しないので、偶然窓を開けた秋帆に来てもらった。
いつまでも頼りっきりではダメだと思っていても、誰かに助けを求める必要があった。
ものの数分で話し終えたあと、秋帆は眉間にシワを寄せて難しそうな顔をした。
「うーん。いっちゃんの彼氏が、あの雑木林の中で死んでたなんてね……。どうすればいいか私に聞かれても正直困るけど、悲しい出来事は忘れるしかないね」
今まで自分にとって大切な存在を一度も失った経験がないのか、いっちゃんになんて言ってはげませばいいかわからないらしい。
しかし『悲しい出来事は忘れるしかない』という秋帆の言葉が出た途端、いっちゃんが泣き叫んだ。
忘れられるわけがない。
大好きだった自分の恋人を失ったショックは計りしれない。
同じ経験を持った人じゃないと、いっちゃんを落ち着かせることができないのか。
悲しみによる悲痛な叫び声がこの場所を包み、私は秋帆と目を見合わせた。
秋帆はあきらめたように首を小さく左右に振る。
どうすればいいのかわからない。
私たちでもおさえることができないいっちゃんの慟哭に、ただ黙ることしかできなかった。