誰も知らない彼女
ここかもしれない。


いっちゃんから聞いて頭の中に入れた家の情報と今映っている家を照らし合わせる。


うん、聞いた特徴がすべて当てはまっている。


門のそばに彫られた表札がメモに書いてある名前の名字と同じであることを確認し、歩み寄る。


表札には【川西(かわにし)】と書かれてあり、メモの名前の名字もまったく同じ。


この名字はこの町には何軒かあるかもしれないが、賭けにいってみる。


メモを握る手の力をさらに強くして、表札の下のインターホンを迷いなく押す。


家の中でも外でも響く大きな音に耳をふさぎたくなる衝動に駆られる。


しかし、完全に耳をふさぐ前に玄関のドアがゆっくり開き、姿勢をピンとただす。


私が目を大きく見開いたと同時に、ドアを開けたらしい人物がおそるおそるといった様子で顔を覗かせる。


ドアを開けたのは、すっかり落ちぶれたような印象のある女性だった。


顔を見ただけで年齢を特定するのは難しいかもしれないが、見た感じは40代前半くらいだろうか。


髪はところどころ白髪になっているところがあるせいでさらに老いて見える。


クマもはっきりと目の下にできており、頬がこけている。


血色の悪さが目立つ、シミの多い肌。


服もシワシワになっているし、羽織っているカーディガンがよれよれだ。


無頓着で、少し怖い。
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